【日本・アメリカ】首相訪米、日米首脳共同声明発表。日米気候パートナーシップでは3分野で協働

訪米中の菅義偉・首相は4月17日、米国のジョー・バイデン大統領の日米首脳会談を行い、日米首脳共同声明を発表した。その中で、「日米気候パートナーシップ」と「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」を立ち上げた。

日米気候パートナーシップは、「気候野心とパリ協定の実施に関する協力・対話」「気候・クリーンエネルギーの技術及びイノベーション」「第三国、特にインド太平洋諸国における脱炭素社会への移行の加速化に関する協力」の3項目からなる協働宣言。

まず、気候野心とパリ協定の実施に関する協力・対話では、高い水準での気候変動緩和を行うことで双方が協力し、パリ協定達成に向けた国内での実施に関する対話を行うというもの。国別削減目標(NDC)と2050年二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)の達成に向け、必要な計画と政策に焦点を当て、11月に開催される第26回気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議(COP26)とその先を見据える。

気候・クリーンエネルギーの技術及びイノベーションでは、再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵(蓄電池や長期エネルギー貯蔵技術等)、スマートグリッド、省エネルギー、水素、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)/カーボンリサイクル、産業の脱炭素化、革新原子力等の分野を含むイノベーションを協力分野として挙げた。現在の原子力発電技術については含まれなかった。

第三国、特にインド太平洋諸国における脱炭素社会への移行の加速化に関する協力では、日本の外交政策の生命線であるインド太平洋で両国が協力し、再生可能エネルギーの普及、経済の脱炭素化を推進するというもの。日米メコン電力パートナーシップ(JUMPP)、新設の日米クリーンエネルギーパートナーシップ(JUCEP)、既存の枠組み等を活用していく。念頭には中国への対抗がある。

また、海外向けの政府系金融を、2050年カーボンニュートラル及び2020年代の大幅な排出削減に整合的なものとするこも約束した。これにより、日本の政府系金融機関が海外に石炭火力発電新設プロジェクトを提案していくことが難しくなったが、文章の中で明言は避け、解釈の余地を残した。さらに、他の経済大国も国際的な義務を果たすことを確保していくことでも双方が協力する。

一方、日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップは、経済分野全般での協力関係を約束したもの。競争力・イノベーションでは、がんムーンショット、バイオ・テクノロジー、人工知能(AI)、量子科学技術、民生宇宙協力(アルテミス計画、小惑星探査等)、安全な情報通信技術(ICT)等の分野を挙げた。

新型コロナウイルス感染症対策を始めとする医療・健康の分野では、オーストラリア及びインドとの画期的な「日米豪印(クアッド)ワクチン・パートナーシップ」を打ち出し、インド太平洋諸国でのワクチン接種強化を掲げた。これも中国への対抗が狙い。さらに未来の感染症を防ぐため、「健康安全保障(ヘルス・セキュリティ)」という概念も打ち出した。

また、日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップの中でも、「気候変動、クリーンエネルギー及びグリーン成長・復興」の分野を掲げ、日米気候パートナーシップの内容を再度盛り込んだ。

その他、今回の日米首脳共同声明では、中国への対抗を随所に記した。まず、「東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対」「南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明」「国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認」「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」「香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念」等。その上で、「中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した」と綴った。

懸案のミャンマーに関しては、「日米両国は、ミャンマー国軍及び警察による市民への暴力を断固として非難し、暴力の即時停止、被拘束者の解放及び民主主義への早期回復を強く求めるための行動を継続することにコミットする」とした。日本は、クーデター後も、ミャンマーへの経済支援を通じた影響力確保の道を探っているが、日米首脳共同声明では、軍政に対し厳しい抗議を伝える形となった。

今回の日米首脳共同声明に対し、中国は強く反発している。

【参照ページ】日米首脳共同声明

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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