【国際】脱炭素に向けた政府間経済会合、主要国がリーダーシップ発揮。経産省の遅れ目立つ

23ヶ国・地域が加盟する国際会合「ミッション・イノベーション(MI)」は6月2日、議長国チリの下で、第6回会合を開催。カーボンニュートラル型のエネルギー転換で、クリーンでアフォーダブル(手頃な価格)なエネルギー社会を実現するためのR&Dを加速させるため、2025年までの行動計画「ミッション・イノベーション2.0」を採択した。4つのアクショングループの委員長国も決まったが、日本はいずれにも選ばれなかった。

MIは、第21回気候変動枠組条約パリ締約国会議(COP21)の場で有志国が提唱し2015年に発足。現在の加盟国は、日本、米国、EU、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、オーストリア、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、英国、ノルウェー、カナダ、オーストラリア、中国、韓国、インド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、モロッコ、チリ。

MIは、2015年に5年間のミッションステートメントを策定し、今回新たなに第2弾のミッションステートメント「ミッション・イノベーション2.0」を採択。2030年までの10年間で投資を拡大することで合意した。さらに今回、再生可能エネルギー、グリーン水素・ブルー水素、ゼロエミッション船の3つの領域で官民連携プラットフォームの設立も決定した。

再生可能エネルギー委員会の委員長国は、英国、イタリア、中国。2030年までに再生可能エネルギー100%での電力系統が可能であることを実証する。発電だけでなく、送電網(グリッド)全体を構想する。

グリーン水素・ブルー水素委員会の委員長国は、米国、EU、英国、オーストラリア、チリ。2030年までにグリーン水素とブルー水素を1kg当たり2米ドルにまで下げ、コスト競争力を高める。水素版のシリコン・バレー「水素バレー」を世界100ヶ所以上に立ち上げ、水素循環の実現に近づける。

ゼロエミッション船委員会の委員長国は、米国、デンマーク、ノルウェー。民間主導の「グローバル海事フォーラム」と、「マースク・マッキンリー・モラー・ゼロ・カーボン・シッピング・センター(Maersk Mc-Kinney Moller Center for Zero Carbon Shipping)」も委員会を牽引する。2030年までに、グリーン水素、アンモニア、メタノール等を用いたゼロエミッション燃料割合を世界の遠洋航行の5%以上にまで引き上げることを目指す。

【参考】【デンマーク】マースク、65億円拠出し海運の脱炭素化研究センター設立。日米企業も参画(2020年6月30日)

さらに電力分野では別途、投資家、イノベーター、需要家の協働プラットフォーム「イノベーション・プラットフォーム」の設立も決定。その一環として、インドがMI加盟国間の意見交換ネットワーク「ミッション・イノベーション・クリーンテック・エクスチェンジ」を発足すると発表した。

また、29カ国が加盟するクリーンエネルギー大臣会合(CEM)は6月3日、議長国チリにより第12回会合を開催。今後5年間のクリーンエネルギーの更なる普及拡大に向けた国際協力の強化されたプログラム「CEO3.0」で合意した。

CEMは2010年に第1回会合を開催。現在の加盟国は、日本、米国、EU、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ポーランド、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、英国、ノルウェー、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ロシア、中国、韓国、インド、インドネシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、南アフリカ、メキシコ、ブラジル、チリ。CEMは、再生可能エネルギー、原子力発電、水素、炭素回収・利用・貯留(CCUS)を「クリーンエネルギー」と定義している。

今回の会合では、クリーンエネルギーへの転換を加速させ、電力のクリーン、アフォーダブル(手頃な価格)、信頼性の3つを確保することが急務と認。CEMの全精力をかけて、過去10年間を上回るクリーンエネルギーの普及加速、電力だけでなくエネルギーシステム全体の変革、政府・企業・消費者・市民が一体となったインクルーシブなアプローチをの3つを実現すべきと唱えた。

CEM3.0では、CEM事務局が、今後5年間の行動フレームワークと、今後3年間のタスクを固めることで合意。その上で加盟国は、自身の適切で予測可能な行動計画をCEMに提出することにコミットする。CEMは、2022年は米国、2023年はインドが議長国となることも決まった。

【参照ページ】Mission Innovation launches a decade of clean energy innovation to accelerate achieving the Paris Agreement Goals
【参照ページ】Press Release – Launch of CEM3.0
【参照ページ】梶山大臣、長坂副大臣、江島副大臣がクリーンエネルギー大臣会合及びミッション・イノベーション閣僚会合(テレビ会議)に参加しました

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

Sustainable Japanの記事をもっと読みたい方はこちらから
※一部、有料会員記事もございます

関連記事

SHARE