【北米】TCエナジー、キーストーンXLプロジェクト中止を決定。バイデン大統領が認可撤回
カナダエネルギー大手トランスカナダ・エナジー(TCエナジー)は6月9日、長距離石油パイプライン「キーストーンXLパイプライン建設プロジェクト」を中止するに至ったと発表した。カナダのアルバータ州政府と協議し、プロジェクトを再考した結果と説明した。
「キーストーンパイプライン建設プロジェクト」の第4計画区間プロジェクトの通称。名称に入っている「XL」とは、「Export Limited(輸出特急)」の意味。事業主はトランスカナダ1社。2008年には米コノコフィリップスが権益50%を獲得し参画したが、わずか1年半後にトランスカナダがコノコフィリップスの全権益を買い取り、トランスカナダが権益100%を保有している。
「キーストーンパイプライン建設プロジェクト」は、カナダ・アルバータ州のオイルサンドから採掘された石油が集積する同州Hardistyから、米国テキサス州の石油輸出港ポート・アーサーや同州ヒューストンの石油化学コンビナートまでを総長4,500km以上のパイプラインで結ぶ壮大な計画。2005年に計画開始、2007年にはカナダ連邦政府が、2009年には米国政府が第1計画区間から第3計画区間までの計画を承認した。しかし米国側では、オバマ大統領が2012年1月から一貫してプロジェクト承認依頼の却下。2017年に米トランプ大統領が連保政府機関に対し、同プロジェクトを承認するよう指示する大統領令に署名し、その後、連邦地裁では建設中止の命令が出るなど政治的論争にも発展。そして、バイデン大統領が1月20日にプロジェクト承認を撤回する大統領令に署名していた。
【参考】【アメリカ】 トランプ大統領、「キーストーンXLパイプライン建設計画」を承認する大統領令に署名(2017年4月7日)
【参考】【アメリカ】連邦地裁、キーストーンXLパイプライン建設プロジェクトの建設中止命令(2018年11月12日)
【参考】【アメリカ】バイデン大統領、WHOやパリ協定への復帰、入国規制緩和等の大統領令に署名。各省庁に指示(2021年1月21日)
TCエナジーによると、1月20日に米大統領の認可が停止状態に陥っていたという。同社は、プロジェクトからの安全な撤退のため、規制当局、ステークホルダー、先住民族との協議を続けるという。
同プロジェクトは、パイプラインの経路上にある水系の安全性を巡った先住民族の権利軽視や環境破壊、化石燃料エネルギーによる気候変動悪化に対し、数々の批判を生んできた。TCエナジーは今回のプロジェクト中止に際し、カナダ政府、アルバータ州政府、業界団体、地域コミュニティ、先住民族グループ、地主等のこれまでの対話に謝意を表明。また、意味のある先住民族の公平な機会、ライフサイクル全体を通じて二酸化炭素排出量がゼロのパイプライン運営等の意義を学び、今後に活かしたいとした。
同社は他にも、200億米ドルのエネルギー新規プロジェクトを進めており、70億米ドル分のプロジェクトは着工していることも強調。今後も、天然ガスや液体燃料のパイプラインや輸送、発電事業を成長させていくことも表明した。
【参照ページ】TC Energy confirms termination of Keystone XL Pipeline Project
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