【日本】GPIF、東証一部上場企業対象の2020年アンケート結果を公表。機関投資家の統合報告書活用進む
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5月12日、東証一部上場企業を対象に実施した機関投資家のスチュワード活動に関する第5回アンケートの結果を公表した。IRミーティングの変化、運用会社による統合報告書の活用状況、集団的エンゲージメントの対応評価、議決権行使に関する対話、ESGインデックス採用に関する評価等、GPIFが目指す企業の長期志向経営に向けた内容となっている。
GPIFは、運用会社のスチュワードシップ活動の動向を把握するため定期的に上場企業にもアンケートを実施。一昨年までは、JPX400採用企業のみを対象としていたが、昨年から東証一部上場企業にアンケート送付対象を拡大した。今回の回答率は31.2%(前年は30.6%)。2,186社にアンケートを送付し681社から回答があった。企業規模別では、大企業の回答率が84.8%に対し、小型企業は20.2%と規模により大きな差が出た。回答期間は1月15日から3月13日。
GPIFから運用委託を受けている運用会社とのIRミーティングについて、約4割の企業が好ましい変化を感じると回答し、前年から変化はなかった。好ましくない変化が増えたとしたのはわずか0.4%だった。
機関投資家に示している長期ビジョンについては、想定年数が「20年以上」とした企業が前年の3.3%から6.9%へと大幅に増加。10年以上の尺度で想定している企業の割合が45.1%から53.5%へと伸長した。
統合報告書の機関投資家の活用についても、「進んできた」の回答が、2018年は17.5%、2019年は39.4%、2020年は50.0%、2021年は61.7%と大幅に上昇した。
ESGで重視しているテーマでは、コーポレートガバナンスが71.7%、気候変動が63.6%、ダイバーシティが43.2%、健康・安全が40.6%、人権と地域社会が37.0%の順。前年から最も大きく増えたのは、気候変動が9.7ポイント、健康・安全が8.0ポイント増えた。
同アンケート結果では、機関投資家と発行体側双方の改善が見られるが、回答率が31.2%なことから、回答に積極的に応じていない企業の状況が依然として気にかかる状況だ。