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【SDGsインタビュー】(前編) ”真のパートナーシップ”で変える未来、世界と日本のリアルに迫る- 環境省中井統括官インタビュー


“transforming our world(我々の世界を変革する)”

2015年の9月25日-27日、ニューヨーク国連本部において採択されたSDGs(sustainable development goals)における主題を表す言葉である。この力強い合言葉に後押しされるように日本でもSDGs推進の必要性が叫ばれるようになった。しかし、現状では「世界がSDGsを達成した時のビジョンはあるのか?」「現在日本はどこへ向かっているのか?」など、SDGs推進の先行きが見えないという不安の声も同時に生まれている。

今回のSDGs UNITEDインタビューでは中央省庁の壁を超え“真のパートナーシップ”を創造し続ける日本のSDGs推進に欠かせないキーパーソン、環境省の中井徳太郎さんに世界で起こっている気候変動のリアル、日本がこれから向かう方向性についてお話しを伺う。

中井徳太郎さんプロフィール: 環境省総合環境政策統括官。1962年生まれ。東京大学法学部卒業。1985年大蔵省入省。財務省主計局主計官(農林水産省担当)などを経て東日本大震災後の2011年7月の異動で環境省に。大臣官房秘書課長、大臣官房審議官(総合環境政策局担当)、大臣官房審議官(総括担当)、廃棄物・リサイクル対策部長を経て、2017年7月より現職。

【世界各地で起こっている異常気象について】

福永:中井統括官、本日はよろしくお願いいたします。日本の環境政策を統括していらっしゃる中井統括官に、ずばり今私たちの住む地球はどのような状況にあるのかお伺いしてもよろしいでしょうか?

中井統括官(以下、中井):実は今年フランスで46℃近くまで気温が上昇したことをご存知ですか?タイでも気温が43℃まで上がっている。一方で、北欧では平均気温が例年より10℃低いというとんでもないことが起こっている。これはヨーロッパだけでなく、日本でも台風災害がひどいことになっていたり、メキシコでは雹(ひょう)が2メートル近く積もったと。アメリカでも洪水が起こったり森林火災が起こったり、みんなが肌で地球がまずいんじゃないかと感じている。

Data from NASA

福永:今年日本に立て続けにやってきた強力な台風からもその変化を感じ取ることができます。

中井:地球のエコシステムとして森林や植物が光合成をしてCO2を酸素に変えてくれているわけだよね。そのCO2濃度がある種異常値を超えて病気の症状のように気候変動という形で熱波になったり、洪水になったり、ハリケーンになったり人災にまで及んでいる。

化石燃料や地下資源を掘り起こして大量生産・大量消費・大量廃棄をして便利になった結果、じわじわと体質が劣化して慢性病のように私たちの生活に被害が出ていると言える。

福永:SDGsにも環境についてのゴールが大きく盛り込まれていますよね。

中井:SDGsとは2015年に国連でみんなでやっていこうと採択された持続可能な開発目標のこと。SDGsを捉えるには、地球全体が健康でない状態にあって、「今地球を健康な状態に戻さないと未来がまずいですよね」というところで17の目標が設定されている。この中の13番は気候変動の目標、14番が海の保全、15番が陸の保全、そのほかにもエネルギーをクリーンになど、環境要素が全面に入っている目標となっている。地球が生き物として生きているとしたら病気にならないようにしましょうという話なんだけど、人間が一気に増えて地球の体に負担がかかるような開発をしたんで生物の絶滅速度が一気に上がっているなど危ない状況になっている。

【日本におけるSDGsのビジョン=地域循環共生圏】

福永:日本においてもこの危機感というものは感じていらっしゃいますか?

中井:地球全体の話として話したけれど、もちろん自分たちの足元の課題として捉えなければいけない。環境経済社会の問題はそれぞれ連鎖していて、21世紀の社会を安心安全で経済も社会も回っているという状況をどう描けるのか、というのが課題。

具体的にいうと、少子高齢化で人口減少している中、地方が衰退してコミュニティーがなくなってしまう。実はそこに大事な農業生産の基地があるけれど耕作放棄地が広がってしまう。つまり人の手が入らなければいけないところに人の手が入らなくなってしまっているという現状がある。この環境の課題に加えて温暖化で台風が激甚化して土砂災害など台風の被害が拡大しているなど、果たして様々な社会の問題が起きている中で経済が回っていくのか。

日本においての特徴は、もともと自然豊かな国であるのにも関わらず食べ物もエネルギーも全部輸入に頼ってしまっていること。しかもそれが一般の人々には見えていない構造の中、ここ50年くらいで大きく進んでしまった。けれど、今後日本でそういう経済を続けられるんですかという話。

福永:社会・経済・環境のバランスを考えて社会を変えていかなければいけない時期にあるということですね。日本における最近の環境政策についてお話しいただけますか?

中井:2015年にSDGsが立ち上がったわけだけれど、日本的に咀嚼して解を見出さなければならないという考え方でやってきた。その内容がまとめられているのが平成30年4月に閣議決定した第五次環境基本計画。環境・経済・社会の3つ全てが調和して問題が解決した絵を描く、そこに切り込むことが環境政策のど真ん中だと思っている。

福永:今中井統括官がおっしゃった言葉からまさに侍のような心意気を感じました。問題が解決した状態を描くことは非常に難しいことだと思いますが、ここに対して環境省が切り込んでいってくださるととても心強いです。

中井:今の状況はとても危うい状態であって、少しだけ直せばそれで解決するという微調整の話ではない。究極、地球のエコシステムの中でみんなが健康で楽しく豊かにいるという状況を今一度イメージする、それをもう一度やりましょうと。それで出てきた発想が地域循環共生圏という発想になっています。

福永:地域循環共生圏が日本的SDGs達成ビジョンに当たるのですね。

中井:本来あるべき地域や国土の状況とはどういう状況なのかと考えたときに、人の生命活動を維持している水も空気も食べ物もエネルギーも観光資源などの楽しみになるものも全て全部森里川海の自然の恵みからきていると。それがうまく自分の地域で回っているという、そういう社会をイメージしてそこに社会を持っていければいい。

今は食べ物もエネルギーも気がつかないうちに安いほうがいいと思って買っているけれど、実はとてつもなく地球に負荷をかけて遠い地域から運ばれてきた、防腐剤まみれの何を食べているかわからないというような状態になっている。

この現状を変えていくために、身の回りにある森里川海の恵みをもっとうまく使うという発想で、地産地消や自律分散という考えを大切にしている。

この発想をやっていくと、都市ではもっと屋上に太陽光発電パネルをつけるとか、ベランダ菜園をやってミニトマトやナスを作るなど、そういうものも広がってくると思うんだけど、それをやっても東京のコンクリートジャングルではエネルギーがまかないきれない。

そうなった時に、地方では森林や農地などとてつもない可能性を秘めている。農作物を作りながら太陽光発電をつけてソーラーシェアリングを行うとか、森林では間伐したものをバイオマスエネルギーに変えて熱と同時に電気に使うとか、洋上風力ができるとエネルギーが自給できる。さらに地域で必要な量を大きく超えた電気を都会に送って、都会からは人やお金が回る。地域の中でそれぞれ自立しようという努力をしながら、その地域で足りないもの・弱いところは補い合うという発想。化石燃料などの地下資源に依存しないというモデルを日本で作り、海外に広めたい。

福永:地方に眠る可能性をいかに引き出し、うまく循環させるかが鍵となるのですね。日本のSDGsの実践としてぜひ世界に発信していきたいところです。

中井:地域循環共生圏はSDGsの地域での実戦だと考えていて、閣議決定で日本としてはこれでやっていこうという方針を出した。国連はSDGsの17の目標を打ち出しているけれど、全ての目標が達成されて調和した状態というものを描いてくれていない。僕らは根こそぎ病気でダメな状態を体質改善から行っていく。そういうことをやっていくのに、地域循環共生圏はSDGsを実践していくというところのビジョンになる。

福永:確かに言われてみれば17のゴールが達成されて調和した状態を提示してくれているところはありませんね。

中井:地域循環共生圏を実行するに際して、大きく社会が変わっていくという文脈で取り組まなければいけない。やはり、社会には大企業もいれば中小企業や地場産業、学生のみなさんもいる。「みんなが大きなSDGsの文脈で持続可能な方に行動を改めて地域循環共生型のものに向いているんだよ」という証のシグナルがないと民間セクターが事業として動いていかない。そうなると社会は変わっていかない。新しいマーケットなり、購買行動なり新しいシグナルを発信していく必要があって、1つ太い運動がいると。それが実は「つなげよう支えよう森里川海プロジェクト」になると。

実は環境省ではSDGsが発表される前から森里川海の発想というものを持っていて、従来型の考えでちょっとやそっと環境にいいことをやっても変わらない。私たちの暮らしを根っこから支えている森里川海というものに戻って人のライフスタイルを考えましょうということ。要するに「サステナブルな社会に変える」ということ。

サステナブルな社会作りを支える事業をやっていくとライフスタイルを変えるビジネスにリーチがかかる。それをやっていくためにはもうコラボ型しかないと。SDGsの17番の目標にもあるパートナーシップ、同じ船に乗っている共同な立ち位置で、でもそれぞれの持ち場で得意分野をいっぱい出して課題解決を事業として進めていくと。

【SDGsインタビュー】(後編)”真のパートナーシップ”で変える未来、世界と日本のリアルに迫る- 環境省中井統括官インタビューを読む

SDGs UNITEDはつなげよう、支えよう森里川海プロジェクトに賛同しています。

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