【イギリス】政府、ダスグプタ・レビューを受け、全政策への生物多様性組入れに着手

英財務省は6月14日、英ケンブリッジ大学のパーサ・ダスグプタ経済学名誉教授率いるチームがまとめた生物多様性と経済の関係性を包括的に分析した「ダスグプタ・レビュー」が2月に発行されたことを受け、政府全体として「自然ポジティブな未来」にコミットすると宣言した。

【参考】【イギリス】政府、生物多様性と経済の包括分析レポート「ダスグプタ・レビュー」発表。今後政策化(2021年2月8日)

今回、英財務省は、自然と、それを支える生物多様性が、人間社会の経済、生計、ウェルビーイングを最終的に維持するというダスグプタ・レビューの見解に同意。将来の交通・輸送やエネルギープロジェクト等の英国の重要インフラプロジェクトは、生物多様性と動植物の生息地に利益をもたらすことを義務化するための環境法案を改正する方針を示した。とりわけ、欧州最大のインフラプロジェクトとして計画されている「HS2」では、クルー=マンチェスター区域での生物多様性にネットでプラスの影響を与えることを目指すと宣言した。

英政府はまた、英国が二国間援助に関しても、全ての案件で、自然に害を及ぼさないことを求めていく政策も示した。

具体的な政策としては、まず、自然資本観点でのリスク・機会の情報開示を検討する自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の活動に300万ポンド(約4.6億円)を拠出。さらに、自然資本を国民統計の中に組み込むよう国家統計局と協働する。さらに、環境を政策意思決定プロセスで考慮するための政府ガイダンスを改訂。生物多様性を英政府のグリーンファイナンス・フレームワークに組み込むことも掲げた。財政・金融政策の中に気候変動や環境要素を組み入れることを検討している経済協力開発機構(OECD)の「グリーン予算に関するパリ・コラボレーション」にも参画する。

生物多様性に関しては、英国政府が議長国を務めた6月のG7財相・中央銀行総裁会議でもアジェンダとなり、同じく6月に開催されたG7コーンウォール・サミットでも、採択された「2030年自然協定」の中で生物多様性保全が大きく打ち出された。

【参考】【国際】G7財相会合、多国籍企業への事業実施国での15%以上課税で合意。TCFD義務化も支持(2021年6月6日)
【参考】【国際】G7コーンウォール・サミット2021、共同声明採択。パンデミック、気候変動、生物多様性等で合意(2021年6月14日)

英政府は、農業でも、国家気候ファイナンスとして、自然と生物多様性の分野に5年間で30億ポンド以上を拠出することを約束している。発展途上国向けでは、ガーナ、インドネシア、太平洋島嶼国の漁業のサステナビリティに向け、マングローブやサンゴ礁等の沿岸生態系を保護および回復し、海洋汚染の低減を支援するために、5億ポンドのブループラネット基金も発足済み。

【参照ページ】Government commits to ‘nature-positive’ future in response to Dasgupta review

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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