【日本】札幌地裁、同性婚を合法化しない国の行為を違憲と判決。日本初の司法判断
札幌地方裁判所の武部知子裁判長は3月17日、複数の同性カップルが国を相手取り、同性婚を認めないことを不当とし提訴した裁判で、日本史上初めて、同性婚を認めないのは違憲とする判決を下した。法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると判断した。但し、原告が求めていた損害賠償については棄却した。
今回の判決では、同性婚を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の規定が、憲法13条、14条1項、24条に違反するか否かと、同規定を改廃しないことが国家賠償法1条1項が適用する違法事案か否かが争点となった。
今回の判決では、歴史的経緯を踏まえて、同性婚に関する社会的に認識を確認した。すなわち、明治時代から1980年頃までは、同性愛は精神疾患であり、治療すべきものと解され、絶対に禁止すべきとされていた。しかし1981年には、米国精神医学会や世界保健機関が同性愛は精神疾患ではないとした見解が日本でも受け止められ始め、2015年からは登録パートナー制度を設けた自治体が日本でも出てきたと説明した。また世論調査でも、日本でも約半数の国民が、同性婚や同性愛カップルを法的に保護するべきと考えていることも紹介した。
違憲判断では、憲法24条1項は、「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し」としていることから、同性婚を定めてはいないとし、違憲ではないと判断。また、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」としている13条からも、同性婚を認めるべきという解釈を直接導き出すことは難しいとした。
一方、差別を禁止する14条については、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とあり、異性婚が享受できる法的効果が、同性婚では享受できない事に関する合理的根拠がないと判断した。明治時代には、異性婚と同性婚の区別について、「明治民法における婚姻の目的に関する解釈などに照らすと,本件規定は,夫婦が子を産み育てながら共同生活を送るという関係に対して法的保護を与えることと共に,子の有無にかかわらず夫婦の共同生活自体の保護も,重要な目的としていると解する」としつつも、現在は、同性愛は精神疾患ではなく,自らの意思に基づいて選択・変更できないことから、現在も区別する合理性がないとした形。
また、14条の解釈にあたっては、海外で同性婚が認められていることとともに、自治体でパートナー制度が創設することも理由として用いた。自治体が先行してパートナー制度を設けていたことが、裁判所の法解釈にも影響を与えた形となった。
但し、国家賠償法1条1項については、自治体での同性パートナー制度は2015年から広がっており、国民意識の多数が同性婚等に肯定的になったのは,比較的最近と考えられることから、国会の不法行為とはみなせず、賠償の妥当性は否定した。
国は今回の判決を受けても、すぐには動かず、同様の裁判事案での判決を待ってから検討する考え。また、今回の裁判の原告側は、賠償が認められなかったことから、控訴を検討しているという。