【国際】機関投資家イニシアチブTPI、自動車・海運・航空業界の気候対策評価2020。62社対象。二極化傾向

機関投資家大手90機関以上が参加する低炭素経済推進イニシアチブ「Transition Pathway Initiative(TPI)」は12月9日、自動車・海運・航空大手62社の気候変動マネジメント状況を分析した結果を発表。パリ協定の2℃目標との整合性を持つよう変革してきている企業と、反対に全く対応できていない企業に二極化している状況が見えてきた。

TPIには現在、機関投資家90機関以上が加盟しており、運用資産総額は23兆米ドル(約2,400兆円)。自動車・海運・航空大手に関する調査は、毎年のように実施しており、今回の調査対象企業数は前回の57社から62社へと5社増えた。今年の調査では、リーガル&ゼネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)、BNPパリバ・アセット・マネジメント、Robeco、ニューバーガー・バーマン、アバディーン・スタンダード・インベストメンツの5社が調査資金を拠出した。またTPIでの分析データは、FTSEが提供している。

今回調査対象となった企業の業界内訳は、自動車メーカーが23社、航空会社が23社、海運会社が16社。日本企業では、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、三菱自動車、マツダ、スズキ、SUBARU、ANAホールディングス、日本航空、日本郵船、商船三井、川崎汽船が対象となった。

同調査では、気候変動マネジメントのレベルに関する調査と、二酸化炭素排出量削減目標に関する調査の2つに分けて実施しており、気候変動マネジメントに関する「マネジメント・クオリティ・レベル」では、最高位「4*」と評価された企業が、自動車メーカーで1社のみ。次の「4」の企業が、自動車メーカーで4社、航空会社で7社、海運会社で2社あった。

4*を取得したのはBMW。4取得は、本田技研工業、フィアット・クライスラー、グループPSA、ルノー、ユナイテッド航空、デルタ航空、サウスウエスト航空、ジェットブルー、エアカナダ、エールフランスKLM、カンタス航空、日本郵船、商船三井。日本郵船は昨年の3からランクを上げた。

その他の日本企業では、3取得が、トヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車、マツダ、スズキ、SUBARU、ANAホールディングス、日本航空、商船三井だった。トヨタ自動車、ANAホールディングス、商船三井は昨年の4からランクを落とした。4から3に落ちた企業の全体傾向としては、ロビー活動や業界団体活動での開示が継続的に行われいないという。

また二酸化炭素排出量削減目標に関する「カーボンパフォーマンス」では、62社を対象とし、2030年と2050年の2つの期間で削減目標の整合性を分析した。その結果、2030年では、2℃目標を達成できる野心的な目標を掲げている企業が11社、概ね2℃目標を達成できそうな企業が3社、パリ協定での国別削減目標や国際業界団体の水準はクリアできそうな企業が10社、削減目標が国別削減目標の水準に達していない企業が31社、開示不足が7社あった。2050年では、2℃目標を達成できる野心的な目標を掲げている企業が6社、概ね2℃目標を達成できそうな企業が5社、パリ協定での国別削減目標や国際業界団体の水準はクリアできそうな企業が13社で、2030年期間と比べて達成度が大きく下がった。

2℃目標を達成できる野心的な目標を掲げている企業は、テスラ、フォスクスワーゲン、ダイムラー、ユナイテッド航空、APモラー・マースク、商船三井。

【参照ページ】INVESTORS WARN STALLING TRANSPORT SECTOR FACES ‘MOMENT OF RECKONING’ ON CLIMATE
【レポート】Management Quality and Carbon Performance of Transport Companies: December 2020
【メソドロジー】Automobile
【メソドロジー】Airlines
【メソドロジー】Shipping

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

Sustainable Japanの記事をもっと読みたい方はこちらから
※一部、有料会員記事もございます

関連記事

SHARE