【国際】重工業2050年脱炭素化「ミッション・ポッシブル・パートナーシップ」発足。世界経済フォーラムの活動から発展
世界経済フォーラム(WEF)、国際サステナビリティ企業イニシアチブWe Mean Business、米ロッキーマウンテン研究所、英環境シンクタンクNGOのEnergy Transitions Commission(ETC)の4者は1月27日、世界経済フォーラムが主催したダボス・アジェンダの場で、世界重工業の脱炭素化を加速させる新たなイニシアチブ「ミッション・ポッシブル・パートナーシップ(MPP)」を発足した。加盟企業を募る。重工業は世界全体の二酸化炭素排出量の30%を占める。
今回の発足したミッション・ポッシブル・パートナーシップは、WEFとETCが2019年9月に、国連気候アクション・サミットの場で立ち上げた「ミッション・ポッシブル・プラットフォーム」の発展版。同プラットフォームは、重工業セクターで2050年までに二酸化炭素ネット排出量(カーボンニュートラル)を実現するための協働の場として発足され、発足当初の加盟企業は30社だったが、現在は400社にまで拡大していた。
【参考】【国際】世界経済フォーラムとETC、重工業セクターの2050年までのCO2ゼロで8つのイニシアチブ発足(2019年9月29日)
同プラットフォームのパートナー企業は、BASF、ボーイング、エアバス、ボルボ・カーズ、DSM、APモラー・マースク、ロイヤル・ダッチ・シェル、スパイスジェット、SkyNRG、カーギル、シティグループ等で、いずれも脱炭素化アクションで業界を先行している企業。避けられないメガトレンドを捉えた仲間作りを進めることで、先行者利益を確たるものにしようとしていることが伺える。
今回発足のミッション・ポッシブル・パートナーシップ(MPP)は、We Mean Businessとロッキーマウンテン研究所が運営企業に加わり4者体制となり、プレゼンスが大きく拡大。さらに、戦略パートナーに国際エネルギー機関(IEA)、サポーティング・パートナーに、国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP FI)、COP22発足のマラケシュ・パートナーシップ、Race to Zero、WBCSD、Ceres、グローバル海事フォーラム、ロッキーマウンテン研究所のCenter for Climate-Aligned Finance、Systemiqを迎え、強大な布陣となっている。
ミッション・ポッシブル・パートナーシップ(MPP)が脱炭素化の対象としている重工業セクターは、鉄鋼、アルミニウム、セメント・コンクリート、化学、航空機製造、造船、トラック製造の7つに、金融を含め計8つ。これは、前身のミッション・ポッシブル・プラットフォームを踏襲したもの。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が2020年6月に開始した国際キャンペーン「Race to Zero」で重工業セクターを代表する対象イニシアチブとなる。
MPPは今回、パリ協定の目標を達成するためには、国別の削減目標だけでは不十分であり、各セクター毎のグローバル規模でのアクション設計が必要との考えを披露。これによりテクノロジーやエネルギー転換が加速できると伝え、特にその傾向は重工業では顕著とした。
MPPは、2021年後半に、製鉄、造船、航空機製造の3セクターでの協定を発足させる考え。さらに3年以内に、残りのアルミニウム、セメント、化学、トラック製造でも同様に協定を発足させにいく。そして5年以内に7セクター全てでの投資行動を激変されることを狙うとともに、食品や農業等のセクターでも同様の協定を立ち上げにいく。
MPPのアクションは、COP25議長のカロリナ・シュミット・チリ環境相、COP26議長のアロク・シャーマ英ビジネス・エネルギー・産業戦略相、パトリシア・エスピノサ国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長の3者がまもなく発表する予定のペーパー「The Race to Zero Breakthroughs」にも盛り込まれる予定で、大きな後ろ盾を得る。
【参照ページ】Mission Possible: Climate-Action Partnership Launched to Help Transform Heavy Industry and Transport