【EU】欧州議会、香港、トルコ、ベトナムの人権抑圧で非難決議。制裁発動やFTAでの影響行使を要請
欧州議会は1月21日、人権問題で、中国・香港、トルコ、ベトナムの各政府に対する非難決議を可決した。EUの個人制裁制度や自由貿易協定を通じたEUとしての影響力行使を要請した。
香港については、2021年に逮捕された民主主義団体や活動家の代表と、香港国家安全維持法違反で勾留されている全ての人の即時無条件釈放を要求。また、黄之鋒、林朗彦、周庭の3者を含む香港の平和的活動家についても、容疑を撤回するよう要求した。
欧州議会は、欧州委員会に対し、昨今の香港での民主主義活動家の抑圧は、2020年12月にEUと中国が方向性で合意に達したEU・中国包括的投資協定(CAI)の重要原則の中に反映されるべきとの考えを示し、人権侵害防止のための具体的なアクションをCAIの条項の中に組み入れるべきとした。また、欧州議会は、EU加盟国政府に対し、2020年12月にEU理事会が採択した人権侵害に関する対外経済制裁制度を活用し、林鄭月娥・香港特別行政区行政長官を含む香港と中国の関係者への制裁を発動するよう要請した。これらの香港に対する決議は、賛成597、反対17、棄権61で可決された。
【参考】【EU・中国】双方、EU・中国包括的投資協定(CAI)の重要原則で合意。人権・気候変動規制強化も(2021年1月1日)
【参考】【EU】EU理事会、国・法人・個人への人権制裁制度創設。テロリスト投稿コンテンツ削除法の制定も(2020年12月30日)
トルコに対しては、拘束されてから4年以上が経過するセラハッティン・デミルタシュ元大統領候補の即時無条件釈放を要求した。同氏の釈放は、欧州人権裁判所で二度も判決が出ているという。また政治的理由による国民民主主義党の党員に対する容疑も全て取り下げるよう求めた。欧州議会は、トルコでの司法の独立の後退と、欧州人権裁判所判決の無視に対して重大な懸念を決議し、人権擁護家、学者、ジャーナリスト、精神的指導者、弁護士、LGBTIに対する司法上の嫌がらせも停止するよう求めた。トルコのエルドアン大統領は1月9日に、EUとの新たな関係強化を願う声明を出しているが、欧州議会はそのためには民主主義の原則、法の支配、基本的権利での改善が前提になると考え方を示した。同決議は、賛成590、反対16、棄権75で可決された。
ベトナムに対しては、拘束されている人権ジャーナリストのPham Chi Dung、Nguyen Tuong Thuy、Le Huu Minh Tuanの3者を含む、表現の自由の権利を行使しただけで拘束・刑事処罰された全ての人の即時無条件釈放と容疑の撤回を要求した。欧州議会は、欧州委員会と欧州対外行動局に対し、人権侵害の状況を精査し、2020年8月に発効したEUベトナム自由貿易協定(EVFTA)を活用したベトナム政府への影響力行使を求めた。同決議は、賛成592、反対32、棄権58で可決された。
【参照ページ】Human rights breaches in Hong Kong, Turkey and Vietnam