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【アメリカ】バイデン大統領、気候変動対策強化の大統領令に署名。複数の政府会議設置、科学的根拠重視

米ジョー・バイデン大統領は1月27日、気候変動対策を強化する一連の大統領令に署名した。大統領選挙中の公約を軸に、インフラ整備、雇用創出、気候正義の3つを同時に実現することで、米国と世界への緊急を要する気候危機対策を実行しつつ、米国のエネルギー業界が世界をリードするためのイノベーションや人材強化を支える政策を示した。

まず、政治的介入から科学者を保護し、科学的見地から自由に発言することを保証し、大統領に助言を与えるための機関として既存の「大統領科学技術諮問委員会(PCAST)」の役割を再設定した。PCASTの共同議長には、フランシス・アーノルド科学担当大統領補佐官が就任。科学技術・イノベーション政策で大統領に助言を与えるとともに、経済・雇用・教育・エネルギー・環境・医療・安全保障・人種平等等のテーマでの科学技術情報についても大統領に助言できる権限を付与した。大統領府の科学技術政策局(OSTP)局長に対しては、連邦政府機関が科学的根拠に基づく政策決定を徹底することの責任を負わせた。

次に、外交政策と安全保障政策の中心に気候変動問題を据えた。米国がパリ協定での国際目標を達成するアクションを主導し、2021年4月22日の「アース・デイ」に米国主催の「リーダーズ気候サミット」を開催する。また、気候変動対策の大統領特使のポジションを新設し、オバマ政権のジョン・ケリー元国務長官が就任するとともに、国家安全保障会議の委員にもなる。パリ協定での国別削減目標(NDC)を策定することも公言した。閣僚級の国家情報長官には、気候変動が安全保障に与える影響を分析した「国家情報評価」レポートを作成するよう求めた。国務長官にもモントリオール議定書のキガリ改正の遵守政策を作成するよう命じた。

【参考】【EU】EU理事会、欧州グリーンディールを外交政策の柱に設定。欧州委は企業向け「グリーン消費誓約」発足(2021年1月26日)

さらに、オバマ政権で環境保護庁(EPARK)長官を務めたジーナ・マッカーシーを新設した気候担当大統領補佐官に任命し、ホワイトハウス内に「国内気候政策室」を設置。国内の気候変動政策を総括する。さらに、21の連邦機関の長で構成する「国家気候タスクフォース」も設置した。

公共調達でも、再生可能エネルギー電力と、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)等のゼロ・エミッション車での調達を連邦政府機関に命じ、関連産業の雇用創出を促進。また米国産の政府調達を推進することも命じた。また、公共調達では、労働組合を設置する権利を認めている企業にのみ発注できるとし、気候変動と雇用環境改善を同時に進めるルールを定めた。

公有地を所管する内務長官に対しては、公有地やオフショア海域での新規の石油・ガス開発のための土地・海域リースを原則禁止するよう命じ、既存のリースの更新時にも厳格なレビューを実施するよう命令した。一方、2030年までに洋上風力発電での発電量を現状の2倍にする政策を策定することも命じた。但し、自治が認められているネイティブアメリカン居留地については、居留地と個別にエネルギー政策を協議する。また、全連邦政府機関に対し、化石燃料関連への補助金を合法的に全廃することも命じた。

自然保護では、2030年までに陸上と海洋の面積の30%を保護区に設定する国際目標へのコミットを表明。影響を受ける農林水産業事業者、ネイティブアメリカン、州政府、準州政府、地方政府等とのエンゲージメントのプロセスを開始する。また保護区の職員として米国の若者を積極採用し、雇用環境改善につなげる「Civilian Climate Corps Initiative」を立ち上げることも盛り込んだ。農務長官には、気候スマート農業を導入し、雇用創出するための情報を農業・牧場等の関係者から収集することも命じた。

エネルギー分野では、「石炭及び発電コミュニティと経済再生に関する省庁横断ワーキンググループ」を創設し、フランシス・アーノルド科学担当大統領補佐官と、ブライアン・ディーズ国家経済会議委員長が共同議長に就任。化石燃料と発電の業界への事業転換や雇用影響に関する支援策をまとめる。汚染による環境破壊や、ブラウンフィールドの経済のための有効活用についても同ワーキンググループで扱う。

さらに、気候変動問題と社会的不平等の連関問題を扱う「大統領府環境正義省庁横断会議」と「大統領府環境正義諮問会議」の2つを設置。環境保護庁(EPA)、司法省、保健福祉省を中心に、関連政策を実施していく。また予算面でも、関連予算の40%を社会的支援が必要な地域に投ずる「Justice40 Initiative」を立ち上げ、モニタリングのための指標「環境正義スコアカード」で進捗状況を確認することも定めた。さらに、社会的支援が必要な地域での状況を把握するため、現在EPAが情報開示ツールとして運用している「EJSCREEN」を発展させて、「Climate and Environmental Justice Screening Tool」を開発し、連邦政府での意思決定に活かすことも決めた。

【参照ページ】FACT SHEET: President Biden Takes Executive Actions to Tackle the Climate Crisis at Home and Abroad, Create Jobs, and Restore Scientific Integrity Across Federal Government

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