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【SDGs インタビュー】(後編)世界を変える色をインドから、舐めても安全な絵の具の物語

SDGs インタビュー(後編):インドでの挑戦とラニーさんの想い】

夏輝:インドに飛び出して、最初の頃はどのような活動をしていたのでしょうか?

ラニーさん:「駐在などの手厚いサービスも皆無の、個人でいきなり飛び込み移住だったので、当然ながら散々なことばかりでした。当時生後9ヶ月だった下の子を抱えながら右往左往した結果、日本人にもインド人にも騙されまくって(笑)。いい勉強でしたね。数年後には何でも自分で手配し、現地のお役人を動かせるくらいに、しぶとく逞しくなれましたよ。」最初、南インドの手詰みで収穫されたオーガニックコットンと草木染めのようなナチュラルダイやブロックプリント(インドでは木で版木を作り布に模様をつける伝統技術があります)で、安心安全な赤ちゃんのための服を作りたい!」と思って、インド中の縫製会社を調べてリストアップし、片っ端から連絡を取って、直接アポを取って会いに行きました。

写真:南インド、タミルナドゥの車窓から見える景色

ウェブサイトで「オーガニックコットンを使った安全なベビー用品を作れますよ!」と謳っている会社に実際に行っても、限りなくグレーな点が多々あって、なかなか信頼できないのです。相手から、できるできる言われても実際はできない。ということが何度もありました。騙されたりしたことも何度もありましたし、良い人にも悪い人にもたくさん出会いましたね。そんなことの繰り返しで、ポシャること数年、これはもう自分で一から一つずつ確実に開拓して作るしかないなと思いました。

自分が「これだ!」と納得するオーガニックコットンを探し求めて数年、オーガニックコットンの農家のボスの人のところまで行き、ジン工場、織り工場、とようやく安全なものに出会ったと思ったら今度は肝心な色を染めるものが安全じゃない!という壁にぶつかったのです。

夏輝:世の中のほとんどの染料はケミカルなものが含まれていますよね。色が落ちないようにする定着剤にケミカルなものが使われていたり。

ラニーさん:そうなんです。世に公表されてないことですが、ある有名なプリントインクは、「オレンジと黒を混ぜたら発癌性の空気が発生します」とプリント協会にのみシェアされる情報が隠されていたり。オーガニックな服を作っていると謳う縫製メーカーも、使っているインクは限りなくグレーでした。ウォーターベースだからいいだろ?と言われたり、企業秘密だから染料の元は公開しない、と言われたりで。こりゃダメだ、と思って、絶対安心安全な染料の開発を一緒にしてくれる、お金ではなく、自分が死んだ後、何代先の子どもたちや、地球環境に思いを同じくする人を探し求め、一緒に研究開発を始めたんです。野菜や木の実、木の枝などから色を抽出して、この世の全ての色ができたというくらい多種多様な色を完成させました。

写真:ざくろの皮から抽出した色だけでもこのバリエーションを揃えることができる

ラニーさん:実は、自然な色は染めた後にそのまま残すということがすごく難しいんです。洗濯や天日干しするとだんだん落ちてしまう。せっかく染める色は完成しているのに(開発したもの=色。布も完成してはいたのですが)堅牢度という基準があるために、世に出すことができない。それなら、他の使い方や他の切り口で、この安全な色だけでもいいから世に出してみようということで生まれたのが、舐めても安全な絵の具 ”やさいいろ” だったんです。

夏輝:途方もないロングストーリーを経てやさいいろが生またんですね。

ラニーさん:人が最高の絵を描けるピークは何歳だと思いますか?最高、というのは、上手という意味ではなく、良い、素晴らしい、と言う意味です。人からの評価も気にせずに、自由にのびのびと描くことができるのは、やはり2~3歳だと私は思うんです。その時期のお子さんに、絵の具どころかクレヨンでも使わせると、舐めてしまって、とても危険ですよね。そういう想いで2年前に舐めても安全な絵の具の試作品を使り、使ってみたいママさんたちをネットで募ったのが”やさいいろ”の始まりでした

写真:100%ナチュラルなやさいいろfor foodsを使ったケーキ。今後は食用品の”いろ”も販売予定。ケーキ作成;高梨亜里。

夏輝:私も含めてなのですが、そもそも絵の具が危険という認識があまりないですよね。食べものではないということはわかっていますが、どれだけ人体や環境に害があるのか、あまり考えたこともなかったです。そして私は小学生の頃、学校や家で絵の具を普通に水道に流していました(笑)

ラニーさん:ですよね。この間、娘の夏休みの宿題の一つに、「川を綺麗に」という表題で絵画ポスターが学校から出ていたんです。小学生のみんなは、『川にゴミを捨てないで』というところにフォーカスした絵を描いている。でも、そのポスターを描くのに使った絵の具を水道に流したら、みんなで川を汚しているのかも、だなんて誰も思わない(笑)大人でも、家庭排水にまで意識が回っている人がいたとしても、ちょっとだけだったら大丈夫とか、薄めれば大丈夫とか、そういう風に思っているのではないでしょうか。

赤ちゃんが生まれて初めて触れる色が安全であってほしい

夏輝:舐めても安全な絵の具やさいいろを通して(消費者・(SDGs UNITEDの)読者の皆さんに伝えたいメッセージはありますか?

ラニーさん:大切な友人の赤ちゃん出産祝いに”やさいいろ”をプレゼントしました!というメッセージをお客さまからいただいたことがあって、赤ちゃんが生まれて初めて触れる色になれた!それも安全なものにということが、すごく嬉しかったんです!

赤ちゃんに安心なものは環境にもやさしくあるべきだと強く思います。私は、人にも環境にも無害な”いろ”をたまたま世に出すことができましたが、みなさんが、絵の具だけでなく、自分たちが当たり前に日々使っているものについて、選択するときにちょっと気にすることができたら、すごく世の中を変えることができます。自分の身の回りにある「当たり前」に対して少しでも意識するようになる、そのきっかけを “やさいいろ” が作れたらいいなと思います。

夏輝:「赤ちゃんが 生まれて初めて触れる色が安全であってほしい」 この一言にラニーさんの「やさいいろ」にかける想い、インドでの7年間の想いがぎゅっと凝縮されていますね。これからも自分の信念に従って挑戦し続けていくラニーさんの活動が楽しみです。本日はありがとうございました。

Maharanee Organic Private Limited
ウェブサイトはこちら▼
https://maharaneeorganic.com/

SDGs インタビュー(前編):ラニーさんの紹介とインドに導かれるまでのストーリー】を読む

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