【日本】電事連、原発プルサーマル基を「2030年までに12基」の新計画。中間貯留・再処理という難題も
大手電力10社で構成する電気事業連合会(電事連)12月17日、沖縄電力を除く加盟9社と日本原子力発電、電源開発の11社から「新たなプルサーマル計画について」という文書を発表。プルサーマルを早期かつ最大限導入することを基本とし、現在4基あるプルサーマル基を、2030年度までに12基以上に増やすことを新たな計画として定めた。電事連はこれまでプルサーマル基を16基から18基にすることを目標として据えていたが、一旦、2030年度までの目標を12基に切り替えた。
プルサーマルとは、日本の核燃料サイクルの鍵となっている技術。通常の軽水炉で使用される核燃料は、核分裂しにくいウラン238が95%から97%、核分裂しやすく燃料源となるウラン235が3%から5%で構成されている。その核燃料は、原子力発電所で使用されると、ウラン238は93%から95%に、ウラン235も1%に減り、プルトニウムが1%、その他高レベル放射性廃棄物が3%から5%に変わる。このうち使用済み核燃料からプルトニウムを回収し、再処理した上で、ウラン238及びウラン235と混ぜた燃料のことを「MOX燃料」とし、このMOX燃料も燃料として使用できる軽水炉のことを「プルサーマル基」、これらの一連の計画を「プルサーマル計画」と言う。プルトニウムは、核兵器の材料となるため、日本政府は国際原子力機関(IAEA)に対し報告を行っている。非核保有国の中で、プルトニウムの再処理を行っている国は、世界で日本のみ。ちなみに、「プルサーマル」は日本の造語で、海外では通用しない。
現在、日本にあるプルサーマル基は、関西電力高浜発電所に2基(3号機、4号機)、四国電力伊方発電所に1基(3号機)、九州電力玄海原子力発電所に1基(3号機)で合計4基ある。また現在、日本には福島第一原子力発電所事故後に再稼働している原子力発電所が9基あるが、プルサーマル基は全て再稼働原発に含まれている。
また現在プルサーマル基にする予定のものが、電源開発大間発電所に1基、日本原子力発電敦賀発電所に1基、日本原子力発電東海・東海第二発電所に1基、北海道電力泊発電所に1基、中部電力浜岡原子力発電所に1基、中国電力島根原子力発電所に1基の合計6基あるが、そのうち地元の同意が得られているのは4基。また東京電力では、福島第一原子力発電所の1基をプルサーマル基にする予定だったが、東日本大震災後の事故で軽水炉そのものが廃炉となった。
(出所)経済産業省「参考資料(核燃料サイクルの現状)」2018年
プルサーマル基で活用しているMOX燃料は、日本では日本原燃の青森県六ケ所再処理工場で生産する計画だが、建設が遅れており、まだ完成していない。そのため、現在MOX燃料は、プルトニウムをフランスに送り、フランスでMOX燃料にされたものを日本に輸入している。そのためフランスには2018年時点で日本のプルトニウムを15.5t保管している。また英国でも当初はMOX燃料を生産していたが、2011年にMOX燃料工場が閉鎖されたため、送ったプルトニウム約21.2tが英国内に滞留し、日本への送還待ちの状態となっている。そのため、フランスと英国は、日本に対し、早急に日本国内にプルトニウムを送り返せるよう求めている。
また日本国内でも、使用済み核燃料は、各発電所や、一部は六ケ所再処理工場の付近の貯留所に蓄積された状態で、全てが六ヶ所再処理工場が正常に稼働開始できるかどうかにかかっている。すでに、日本国内の貯留状況は2018年時点で75%が満杯。現在、伊方、玄海、東海第二、浜岡の各原子力発電所内と貯留キャパシティの拡張と、青森県のむつ中間貯留施設での貯留開始を申請し、対策を講じているが、当然地元の理解が必要となる。むつ中間貯留施設は、東京電力が80%、日本原子力が発電20%の比率で、使用済み核燃料を受け入れる計画となっているが、ここに来て関西電力のものも受け入れるよう電事連側が調整を図っている。
(出所)経済産業省
六ヶ所再処理工場は、当初計画では2009年に試運転テストを終了する予定だったが、20回以上計画を延期しており、日本原燃は12月17日に「2023年度から(プルトニウムの)取り出しを開始できる」とする暫定的な計画をまとめ、2021年度上期稼働としていた計画を再度延期した。建設費用は、原子力発電を行っている事業者から、使用済み核燃料の発生量に応じて資金を徴収しているが、MOX燃料生産工場での費用は、当初総工費計画の7,600億円から、すでに3兆円にまで膨れ上がっている。六ヶ所再処理工場にも別途14兆円を費やした。工場が稼働すると年800tの使用済み核燃料を処理できる。
MOX燃料は、もともとは、高速増殖炉での使用が計画されてきたが、文部科学省の日本原子力研究開発機構が進めていた高速増殖炉「もんじゅ」の建設計画は頓挫し、2016年に廃炉が決定した。また、高速増殖炉が本格的に実用化されるまでの間にMOX燃料を活用するために、日本原子力研究開発機構が進めていた新型転換炉「ふげん」は、先に計画が頓挫し、2003年に廃炉が決定した。そのため、既存の軽水炉でMOX燃料を使用するプルサーマル計画のみが、現在生きている計画となっている。
(出所)経済産業省、パルシステム
電事連は12月17日に梶山弘志経済産業相と面談。梶山大臣はその後の記者会見で「2030年度までに12基という目標は達成可能」「原子力事業者にはしっかりと目標を達成していただくことを期待」と述べた。
また電事連は12月18日、「2050 年カーボンニュートラル実現推進委員会」を設置。加盟10社、日本原子力発電、電源開発、日本原燃の13社の社長が委員となり、ロードマップやアクションプランを定めていくと発表。取組課題として、原子力発電の最大限の活用、再生可能エネルギーの主力電源化、火力発電の低・脱炭素化、新たな技術開発・イノベーション(水素・アンモニア、CCUS・カーボンリサイクル、次世代炉等)、電化の推進等を挙げた。
【参照ページ】新たなプルサーマル計画について
【参照ページ】「2050 年カーボンニュートラル実現推進委員会」の設置について
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