【国際】気候野心サミット2020、パリ協定の自主削減目標引上げが71ヶ国に。Race to Resilienceも発足
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局、英国政府、フランス政府の共催で、イタリア政府とチリ政府が協力の政府間国際会議「気候野心サミット」が、12月12月にオンラインで開催された。当初は第26回気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議(COP26)が新型コロナウイルスの影響で2021年に延期されたことを受け、臨時で開催が決定。2015年のパリ協定採択からの5周年でもあり、パリ協定の達成を確認し合った。
同サミットの目的は、国際交渉ではなく、国際的な発表の場であり、政府首脳や関係機関からの自主的なコミットメントの発表が相次いだ。同サミット開催時でのコミットメントも含めて、パリ協定に基づく国別削減目標(NDC)を引き上げたのは全部で71ヶ国に達した。そのうちEU加盟国及びその他27ヶ国は、同サミット及びその直前にNDCを引き上げた形となった。サミットでNDC引き上げを発表した国は、カナダ、アルゼンチン、ペルー、コロンビア、アイスランド、バルバドス等15ヶ国。これにより2020年末までに正式に新たなNDCがUNFCCC事務局に提出される国は全部で50ヶ国を超える見通し。
同サミットを受け、二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)を新たに公式宣言した国は24ヶ国となった。この中には、日本、中国、韓国、EU等が含まれる。さらにパリ協定の目標よりも早くカーボンニュートラルを達成する目標を表明した先進国も、フィンランドが2035年、オーストラリアが2040年、スウェーデンが2045年と複数出てきた。
また気候変動の悪影響を受けやすい発展途上国からもカーボンニュートラルが表明された。当諸国のバルバドスとモルディブは、2030年までにカーボンニュートラルを達成。フィジー、マラウィ、ナウル、ネパールも2050年カーボンニュートラルを宣言した。
複数の国からは、カーボンニュートラルに向けた施策レベルでの新たなコミットメントがあった。パキスタンは石炭火力発電の新設禁止を表明。イスラエルも脱石炭火力発電を進めると宣言した。デンマークは、石油・ガス採掘を禁止すると表明した。インドは、2030年までに再生可能エネルギー設備容量を450GWにまで引き上げ、中国は2030年までに化石燃料以外の1次エネルギー供給量を約25%にまで引き上げる。英国、フランス、スウェーデンは、化石燃料に対する海外援助を禁止することも表明した。
同サミットでは、2021年5月に国連生物多様性条約が開催されることを見据え、気候変動対策と生物多様性を結びつける声明も12ヶ国からあった。また海外援助の面では、ドイツは発展途上国支援に5億ユーロ、フランスは10億ユーロを積み上げると発表。世界銀行も全ファイナンスの35%を気候変動関連に充てる計画を示し、欧州投資銀行(EIB)からは同比率を50%にまで引き上げつつ、パリ協定と整合性のないプロジェクトにはファイナンスしない方針を示した。
加えて同サミットでは、自治体、企業、NGO、保険会社等を対象とした世界的な気候変動レジリエンスを高めるための国際キャンペーン「Race to Resilience」も発足した。同キャンペーンは、2030年までにレジリエンスを高めるアクションを起こし、気候変動リスクに脆弱な世界40億人を救うことにコミットする加盟機関を募っていく。同様の分野には気候変動緩和のための「Race to Zero」が6月に発足しているが、新たに気候変動適応のための「Race to Resilience」が立ち上がった形となった。
【参照ページ】Summit shows new surge in action and ambition on road to Glasgow Climate Conference
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