【EU】欧州理事会、CO2を2030年55%削減の欧州委政策を支持。土地利用変化も算出範囲に
EU加盟国首脳級の欧州理事会は12月11日、2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を、現在の法定目標である1990年比40%から、同55%以上に引き上げる欧州委員会提出の政策を支持する決議を採択した。欧州委員会が9月に政策を発表し、EU加盟国と欧州議会の承認を得る作業に入っていた。
【参考】【EU】グローバル大手企業164社、欧州委の2030年CO2排出量55%削減目標を支持。政府に強い圧力(2020年9月21日)
今回の決議は、同目標をEU下院の役割を果たす欧州議会と、EU上院の役割を果たす加盟国閣僚級のEU理事会に対し、「55%以上削減」の目標を法定化するよう要求した。欧州理事会は、EU法の決定プロセスに公式な立法権限を持たないが、首脳級の決定は、閣僚級のEU理事会に対する実質的な政治的影響力がある。欧州議会は60%以上削減に引き上げることを可決しているが、今回の欧州理事会の決定で、55%に落ち着く見通し。
【参考】【EU】欧州議会、2030年のCO2削減目標を60%に引上げで可決。今後、加盟国と折衝(2020年10月16日)
同決議は今回の決定の理由について、「持続可能な経済成長、雇用創出、EU市民への健康と環境的な便益、EU経済の長期的なグローバル競争力」のためと説明。目標達成に向け、欧州委員会が提出したEUの2021年から2027年までの多年次財政枠組(MFF)「Horizon Europe」と、新型コロナウイルス・パンデミック復興基金「Next Generation EU(NGEU)」の双方で、適切な予算を付けるよう求めた。
さらに、現在、EU立法手続き中のEUグリーンボンド基準を2021年6月までに立法化し、欧州投資銀行(EIB)グループが進める2025年までの5カ年「気候銀行ロードマップ」についても歓迎した。
欧州委員会が提出した新目標は、二酸化炭素排出量を引き上げるだけでなく、これまで算出の対象から外れていた「土地利用変化(LUC)」も含めた目標値に基準を変更しており、これにより以前よりも達成のハードルは高くなっている。欧州理事会は、10月にも一度議論していたが、ポーランド、ハンガリー、チェコ等が、実現方法に関する加盟国の自由度が不透明であることに難色を示し、結論が先送りに。今回の決定では「出発点や国別の事情を考慮」しつつ、「最もコスト効果的な可能な手法で」とすることで、一定の自由度を容認することで、コンセンサスを得た。
同日には他にもEUで様々な動きがあった。欧州委員会が提出したEUの2021年から2027年までの多年次財政枠組(MFF)「Horizon Europe」は、EU理事会と欧州議会の間で政治的合意に達し、予算成立の道筋がついた。その中で、欧州委員会が提出した経済・雇用転換のための予算「Just Transition Fund」175億ユーロ(約2.2兆円)についてもEU理事会と欧州議会の同意も得た。またEU理事会は、欧州委員会が11月に発表した「EU洋上再生可能エネルギー戦略」についても支持を表明している。
【参考】【EU】欧州委、洋上再エネ戦略発表。2050年までに洋上海洋エネルギー発電を340GWに(2020年11月20日)
【参照ページ】欧州理事会決議
【参照ページ】Horizon Europe : Council presidency reaches political agreement with the European Parliament
【参照ページ】Commission welcomes the political agreement on the Just Transition Fund
【参照ページ】Offshore and other renewable energies: Council adopts conclusions
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