【アメリカ】S&Pグローバル、コロナ禍で働く女性のストレス源が変化。家族休暇制度が重要に
S&Pグローバルは10月19日、米退職者協会(AARP)と協働し、米国企業の家族関連休暇施策と女性従業員・役員の割合との関係性を分析した調査結果を発表した。新型コロナウイルス・パンデミックにより、特に働く女性にとって企業が人事制度を柔軟に考える追い風が、米国でも来ていることがわかった。
同調査では、8月20日から9月8日にかけ、従業員1,000人以上の企業に勤める1,573人から回答を得た。男女比は、男性51%、女性49%。また、蘭ジェンダーNGOのエクイリープのジェンダーや平等性に関するデータや、ESG株式インデックスDJSIの元データ「SAM Corporate Sustainability Assessment(CSA)」のESGデータを活用し、分析した。
米国では以前から日本と同様、勤務時間や業務場所の制約により、働く女性が苦労する状況が続いていた。しかし新型コロナウイルスにより、テレワークや、テレビ会議中に家族が映り込むことが一般的になり、働く女性のストレスは軽減される方向に向かっている。また企業側でも、育児や介護、家族疾病時の休暇取得を柔軟に行う姿勢が出てきている。
今回の調査では、女性を採用し、継続的に勤務してもらう上で効果的なポイントは「柔軟性」と分析。採用方針に「平等」の観点を加え、勤務時間が柔軟な企業は、より多くの女性を採用する傾向があり、相関係数は0.22と僅かながら相関が見られた。
また、フレックスタイム制を導入している企業では、離職率が低くなると分析。統計的にも有意な結果が得られた。勤務時間と業務場所の選択肢が与えられている場合に、離職率が低くなることも明らかとなった。また、女性役員の増加は、従業員の勤務時間に柔軟になる傾向があることもわかった。
同調査結果では、売上10億米ドル(約1,050億円)以上の企業では、58%が有給の育児休暇を付与しており、43%がフレックスタイム制を導入していた。だが、中小企業では、それぞれ42%と38%。また、プライマリケア休暇を14週間以上付与している企業もわずか10%、セカンダリケア休暇を2週間以上付与している企業も19%だった。
上級管理職については、企業から付与される休暇に関係なく、親や家族にかける時間がはるかに短い点も明らかになった。若手社員の4週間以上の休暇取得率が約30%なのに対し、上級管理職では23%だった。
その一方で、パンデミックにより、以前よりも働く女性にとって別のストレスが出てきてることも明らかとなった。これまで育児の頼りにしていた祖父母が、感染防止のための行動制限で、孫の面倒をみることができなくなり、母親の負担が増加。さらに介護でも、体調の悪い同居家族がいる従業員の出社を嫌がる企業が増えており、家庭介護者の30%以上は、新型コロナウイルス・パンデミックに伴い、大幅なストレス増加を報告している。さらに約43%は、ストレスがやや高まったと回答。介護の責任が、職場でのネガティブな評価に繋がったと感じている層も若手世代に多く、55歳以上の14%に対し、35歳から54歳でも45%だった。
S&Pグローバルは今回の調査を基に、育児、介護、家族疾病時の休暇制度を充実させることが、働く女性の雇用継続やストレス軽減に効果的としている。また、育児、介護等が母親の責任と位置づけられていることにも懸念し、同様の休暇を、制度と職場理解の双方で、父親も取得できるようにすることを薦めた。
【参照ページ】COVID-19 Could Rapidly Expand Family-Leave Policies. It Could Also Deal A Serious Blow To Women In The Workforce.
【レポート】COVID-19 Could Rapidly Expand Family-Leave Policies; It Could Also Deal A Serious Blow To Women In The Workforce
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