【国際】絶対的貧困者数、2020年に1.5億増の見込み。20年ぶりに増加に転ずる。世界銀行統計
世界銀行は10月7日、新型コロナウイルス・パンデミックの影響で、絶対的貧困の人口の過去20年間で初めて増加に転じ、2021年までに絶対的貧困者が1.5億人増加する見込みと発表した。絶対的貧困とは、1日の生活費が1.9米ドル(約200円)未満の状態にある人。
今回の発表は、世界銀行が2年に1度発行している「貧困と繁栄の共有レポート」の2020年版で報告したもの。貧困率は、2017年の9.2%から、2020年には7.9%にまで減少すると予測されていたが、新型コロナウイルス・パンデミックや紛争、気候変動の影響で、9.1%から9.4%ほどの間の水準に悪化していた。
絶対的貧困の増加は、元々貧困率が高い国で生じているという。特に人口の多い中所得国で多く、増加数の82%がこれらの国に集中しており、もともと絶対的貧困水準から脱していた層が、絶対的貧困状態に陥ってきている。特に今回は都市部で絶対的貧困の増加がみられるという。国連持続可能な開発目標(SDGs)では、2030年までの貧困ゼロを掲げているが、原状ペースでは、2030年の貧困率は7%となる予測。
過去の状況では、2015年から2017年にかけて、貧困から抜け出せた人は世界で5,200万人いるが、1990年から2015年まで毎年貧困率が1%幅減少してきたのと比べると、2015年から2017年の3年間は0.5%ほどに減少幅が鈍化。そして今回、むしろ増加する事態となった。
また今回世界銀行は、国際貧困ラインとして2015年10月以降用いられている「1日1.9米ドル」の定義だけでなく、高中所得国と低中所得国での相対的貧困を考慮するために、1日3.2米ドルと、1日5.5米ドルの定義も用いた貧困率も算出。結果、3.2米ドルでは世界人口の約25%、5.5米ドルでは世界人口の40%以上に達することもわかった。また、先進国での富の減少により、高所得国からの資金援助も停滞することが見込まれている。そのため、現状維持の支援拡大を世界全体に呼びかけた。
【参照ページ】COVID-19 to Add as Many as 150 Million Extreme Poor by 2021