英国営医療法人の「国民保健サービス(NHS)」は10月1日、2045年までにサプライチェーン全体で二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)を実現する長期目標を設定した。同時に中間目標も設定した。NHSは英国全土に14万以上の病床数を持つ巨大な医療機関ネットワークで、巨大な医療法人からカーボンニュートラル目標が発表されたのはNHSが世界初。
NHSが今回設定した目標は、まず、2040年までにNHS自身の二酸化炭素ネット排出量をゼロにし、そのために中間目標として2028年から2032年までに二酸化炭素排出量を1990年比80%削減する。続いて、2045年までにサプライチェーンの二酸化炭素ネット排出量もゼロにし、そのために中間目標として2036年から2039年までに二酸化炭素排出量を同80%削減する。すでにNHSは1990年比で62%の削減を実現している。
NHSは今回、医療法人としてカーボンニュートラル目標を設定したことについて、気候変動や大気汚染は健康被害をもたらし、医療法人としての責務との考えを示した。大気汚染により病院に通った人口は約180万人に達し、熱波では2019年の夏だけで900人が死亡したことを挙げた。また、今後大気汚染を抑止しなければ新たな喘息が、気候変動を抑止しなければライム病や脳炎のリスクが高まるとした。
今回の長期目標設定までの一連の経緯は、英政府と英国会が中心となって進めた市民会合「Climate Assembly UK」が1月に開催した会合が発端。それをきっかけにNHSのイングランド地方組織である「NHSイングランド」が二酸化炭素排出量削減についての貢献策を検討するための「NHS Net Zero Expert Panel」を1月に創設し、9ヶ月で目標がまとまった。