英人権NGOのKnowTheChainは10月15日、食品業界の強制労働問題への対応状況を評価した2020年ランキング「2020 Food and Beverage Benchmark」を発表した。世界上位43社が対象。自社対応だけでなくサプライチェーンでの取組も大きな評価項目となった。同ランキングは2016年と2018年にも実施された。
評価対象となった企業は、コカ・コーラ・カンパニー、コカ・コーラ・ヨーロピアン・パートナーズ、ペプシコ、ダノン、ネスレ、ユニリーバ、ケロッグ、キャンベル・スープ、ゼネラル・ミルズ、モンデリーズ・インターナショナル、ハーシー、クラフト・ハインツ、タイソン・フーズ、ウォルマート、カルフール、テスコ、ウールワース、コストコ等。日本企業では、サントリー食品インターナショナル、イオン、セブン&アイホールディングスが対象となった。
評価は、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に基づき、「コミットメントとガバナンス」「トレーサビリティとリスクアセスメント」「調達慣行」「人材採用」「労働者の声」「モニタリング」「救済措置」の7つの観点、合計23項目で実施。前回からのメソドロジーの修正点は、方針や制度よりもパフォーマンスのさらなる重視、サプライチェーンマネジメントの視点の強化、労働者の声や採用での人権保護、「イネーブリングの権利」の視点等。
今年の首位はテスコ。サプライヤー契約の中で、早期支払いや労働慣行パフォーマンスをサプライヤー選定プロセスに組み入れたことや労働者の声を積極的に収集している点が高く評価された。またサプライチェーンでの労働組合やNGOとの協働状況を積極的に開示していることでもスコアが高かった。前回まで二年連続で首位だったユニリーバも2位に付けた。
2位以下は、ネスレ、ケロッグ、ウォルマート、ウールワース、コカ・コーラ・カンパニー、コールズ、J.M.スマッカーの順。全体として、ガバナンスやリスクマネジメントのスコアは改善がみられたが、調達や労働者の声の把握に関するスコアで差がつく結果となった。特に新型コロナウイルス・パンデミックにより、生産事業者への支払いサイトの前倒し、労働契約の期限拡大、事業継続のためのプレミアム支払いを行っている企業はスコアが高くなった。
個別企業の改善度の観点では、米モンスター・ビバレッジが、前回0点から今回は26点に大きく上昇。株主である機関投資家からの積極的な人権尊重アクションが功を奏したとの見方を示した。
日本企業では、セブン&アイホールディングスが26位(22点)、イオンが31位(17点)、サントリー食品インターナショナルが38位(8点)と低迷。全て今回の43社の平均である28点を下回った。今回日本向けに、日本語での報告書も発行され、具体的な改善ポイントも指摘された。
【参照ページ】KnowTheChain Food & Biverage2020
【参照ページ】KnowTheChain Food & Biverage2020 日本語版
【画像】KnowTheChain